芦名野ひとし「ヨコハマ買い出し紀行」 14

ヨコハマ買い出し紀行 (14) (アフタヌーンKC (1176))

ヨコハマ買い出し紀行 (14) (アフタヌーンKC (1176))

我が家において、「ARIA」よつばと!」と並ぶ三大「なごみ系」コミックである本作だが、ついに最終巻ということに。雰囲気的に、一見いつもと同じゆったりとした時間が流れているようだが、実際この巻だけで結構なスピードで時間が経っているような。前の巻からこの巻までの間にまず6、7年は経ってそうだし、そこから最終話までなんだかんだ言ってさらに10年弱くらい経過してるんではなかろうか。しかし諸般の事情によりアルファさん(他)は見た目変わらんので、そのギャップが結構新鮮だったりする。

しかしまあ、作品全体に流れる雰囲気というか、空気というか、英語で言うところのAtmosphereというか、もうね、自分が暮らしたいのはこういう世界だ、とかな〜り本気で思うね、実際。ネオ・ヴェネツィアかヨコハマか、という状態。いやもう、満員電車(と言うほど満員でもないが)で都心に通勤するのはもういいよ、うん。まだこっち来て2年しか経ってないけど。最近、いかに定年退職から手前に切り上げてとっとと田舎に引っ込むか、とかそんなことばかり考えてるような気がする。貯蓄率50%を維持してあと20年働けば、その後20年収入無しでもOKだからその時75歳前で、その程度で人生終わればいいか、とか。なんかとてつもなく後ろ向きな気がする(笑)。

いやまあ私のことはともかく。この作品の世界って、冷静に考えると、海面上昇に伴って文明が衰退して、間違いなく滅亡への下り坂を転がり落ちてる状態なんだろうが、その辺の悲壮感が微塵も感じられないというのがユニーク。むしろその衰退の状態を逆手にとって作り出された、あくせく働くこともないゆったりとした世界観というのがものすごく心地よい。いいなあこれ。どっかにこういう世界、転がってませんか。